損害保険ジャパン日本興亜が4,000人をリストラする手法が怖すぎワロタ

つい最近、大手損害保険会社である『損害保険ジャパン日本興亜』が、4,000人もの大規模リストラを発表しましたね。

このご時世、リストラ自体はそんなに珍しいものではなくなってきているため、僕はニュースを聞きながら、「ふーん、大手の社員も大変ですなあ」くらいに思っていたのですが。。。

ニュースの内容 や ニュースサイトのコメント欄、Twitter をよくよく読んでいると、今回のリストラはかなりえげつないものだったようです。


損保ジャパンのリストラの何がえげつないのか?
について、僕なりに調べたことをまとめておきます。


損保ジャパンと比較すれば、僕が今勤めている会社は規模的には全く比較になりませんが、今後IT化やAI化がズンズンと進んでいく社会において、損保ジャパンと同じことが自分の会社にも起こる可能性は十二分にあり得ます。

そういう意味でも、今回の事例の詳細を頭に入れておくのは、無駄ではないでしょう。
いざというときに、冷静に対応できるかもしれませんから。

損害保険ジャパン日本興亜(損保ジャパン)が発表した内容

ニュースによると、今回損保ジャパンが発表した内容は以下でした。

  • 2020年度末までに、17年比で4,000人の従業員を削減する。
    (この人数は、全従業員の約15%に相当する。)
  • ITを活用して業務の効率化を図り、それにより余った従業員は介護などを手掛けているグループ企業へ配置転換する。
  • 新卒採用も抑える。
  • 希望退職者の募集は予定していない。


注目すべきは、『希望退職者の募集は予定していない』という部分でしょう。

通常のリストラであれば、まず希望退職者を募って、少し高めの退職金を支払って出て行ってもらう、という形が多いと思います。


しかし、今回の損保ジャパンでは、そういったことはしていません。

リストラ対象者の肩を叩く代わりに、介護関連子会社への異動を命じています。

これがどういう意味なのか、企業側の戦略という観点で見てみます。

  1. 200億円で介護会社を買収する
  2. 4,000人のリストラ対象者に介護会社への異動命令を出す
  3. リストラ対象者の多くは異動に応じず自主退職


今回のリストラを行う前に、損保ジャパンは介護系の会社を買収していました。
ワタミの介護系子会社も買収していました。

介護事業は一般的に、肉体的にも精神的にもキツイ仕事というイメージがありますが、需要はかなりありつつも人手不足の業界であり、社会的意義の高い事業です。また、保険と切っても切れない業界であることから、損保ジャパンが買収したとしても何らおかしくないものではありました。


しかし、その買収した会社の使い方がエグイです。


損保ジャパンはなんと、今回の4,000人のリストラ対象者に対し、買収した介護系列子会社への配置転換を言い渡します。

損保ジャパンといえば大企業ですから、そこに勤めている方たちもエリートであり、意識を高く持った方ばかりだと推測されます。


そんな方たちに向かって、「お前、戦力として余っているから、介護業界へ異動な」と言ったところで、大抵の方は応じることはないでしょう。金銭的な理由やプライド、その他諸々の理由から、介護業種に行くぐらいであれば会社を辞めるという道を選びそうですよね。


結果、リストラ対象者の多くは異動に応じず自主退職していきます。
ただ、社員が自ら会社を辞めるとなれば、それは会社都合ではなく自己都合による退職ということになり、退職金が大幅に減らされてしまいます。


損保ジャパンからすれば、リストラ対象者が介護の子会社にしがみついてくれれば、それはそれで介護の人手不足解消になるし、社会貢献度も高まる。もし異業種の会社に転属させることを社員が嫌がって自己都合退職すれば、支払う退職金を大幅に減らすことができて懐が痛まない。会社にとってはどちらでも損をしない仕組みになっているわけです。


ネットでえげつないと言われている理由がこれです。


本来であれば簡単にクビに出来ない正社員を、法に触れることなく自主退職するように強く圧力をかけ、それが成功しようが失敗しようが、企業側が利益を得る。

これを考えた人は頭が良いですが、リストラ対象者からは恨みを買いそうです(笑)

正社員を解雇できないという悩みが一発解消!

日本のサラリーマンは、法によって簡単にクビにされないようになっているため、たとえ40,50代で全く活躍していない、企業から見てお荷物でしかない人がいたとしても、クビにすることはできません。

「整理解雇の4要件」というものがあり、以下のすべてを満たしている場合でないと、正社員を解雇できないのです。

  • 経営上の必要がある
  • 解雇を避けるために努力をした
  • 人選が妥当である
  • 従業員に十分に説明している


『経営上の必要がある』というのは、例えば世界的な大不況に煽られて企業の経営に大きなダメージがあった場合に、解雇によって人員整理することが絶対に必要である場合のことです。


経営者が、「ちょっと赤字だから人員整理したいな」とか「ちょっと経費削減のために人を減らそうか」なんていう軽い気持ちでは、サラリーマンを解雇することができません。

人を減らさないと会社もろとも倒れてしまう!という状況でもない限り、解雇されないということですね。
サラリーマンが「安定」と呼ばれる理由も、ここにあると思います。


『解雇を避けるために努力をした』というのは、正社員をクビにする前に、ほかの部分を削ることで、正社員の雇用を守る努力を企業がしなければならないということです。

ここでいう正社員の雇用を守る努力というのは、例えば、非正規雇用者の解雇や、新卒採用の縮小や中止などのことです。
正社員以外で切れるところがあるならば、まずはそちらを切ってからではないと、正社員を解雇することはできませんよということです。


業務を行ううえでお荷物になっている正社員と、バリバリ働きまくっている非正規雇用者とでは、経営者としては後者を残したいところではあると思いますが、実際には前者を残さないといけないということです。


また、高齢で働く意欲が失せている高給取りな社員を解雇するよりは、若い新入社員の新規雇用を減らすことを優先しないといけないのです。


非正規雇用者や若者にとっては、これほど理不尽なことはありませんよね^^;


『人選が妥当である』は、上で紹介した2つよりはまともな理由です。
簡単に言えば、上司や経営者が、「あいつムカつく!」という感情的な理由では、解雇できませんよということです。

当たり前といえば当たり前ですが、この考え方があるが故に、パワハラなども起こってそうですよね。
気に入らない社員をクビにできないから、せめて嫌がらせしてやろう・・・みたいな。


『従業員に十分に説明している』は、解雇される側と企業側とで十分に協議をし、解雇することについて納得を得るための努力を尽くしていることが必要ということです。

例えば「君、明日から来なくて良いよ」というのは出来ませんよということですね。
解雇するのであれば、事前に解雇理由やその他説明を解雇者に向けて行うことが求められます。

当然と言えば当然な気がしますが、欧米では「君、明日から来なくていいよ」なんてのが日常茶飯事にあるようですから、それと比べると心臓にやさしいルールといえるかもしれません。


さて、ここまで説明してきた、企業がサラリーマン(正社員)をクビに出来ない理由ですが、今回の損保ジャパンが行った方法であれば、解雇者全員を解雇することは無理だとしても、現在の部署から綺麗さっぱり排除することができます。


逆に雇われる側としては、自主退職か、きつくて誰もやりたがらない仕事を続けるか、の2択を迫られることになり、年齢的にも転職が厳しいでしょうから、まさに八方ふさがりの状態になります。


我々サラリーマンを守ってくれている最後の砦『整理解雇の4要件』が、まったく無意味と化します。


大きな会社に勤めているから安心だと、日頃から自分磨きもせずにボケーっとしていると、気づいた時には退路が断たれている状態になりかねないということですね。

最近あった大企業のリストラ一覧

大規模なリストラは今回の損保ジャパンだけでなく、ここ最近では結構多く行われています。
(損保ジャパンのようにえげつないことをやっているところは初めて聞きましたが・・・^^;)

  • 6/24 損保ジャパン 4000人
  • 6/12 JDI 1200人
  • 6/5 MUFG  10000人
  • 6/4 みずほ  19000人
  • 5/26 富士通  2850人
  • 5/22 三井住友FG 5000人
  • 5/14 日産  4800人
  • 4/19 パイオニア 3000人
  • 2/3 ルネサス  1000人
  • 11/7 東芝  7000人

企業がリストラを実施すると、株主たちからは「人件費などの固定費が削減されたことで、利益率が高まる」とか、「無駄な資産を廃棄することで、資産効率が高まる」などの理由で評価され、株価が上昇します。

リストラはまさに、株主(資本家)が儲かり、労働者が苦しむという、資本主義の縮図のようなものです。
ここ最近の大手のリストラのニュースを見ていると、資本主義による格差が広がってきているのかなーなんて思ったりもします。

最後に

今回のニュースを見て、かなり不安になった方も多いのではないでしょうか。
僕は結構不安になりました。
だってその気になれば、どこの企業でもできる戦略ですからね。

副業でいくらか稼いでいるからと言って、僕もまだまだ普通のシステムエンジニアに過ぎませんから、自分のスキルで稼げなくなった時、企業にとってのお荷物になったとき、今回のリストラ対象者のような冷遇を受けることになりかねません。

いきなり肩をたたかれることはなくなっても、自分が絶対にやりたくない事業部への異動命令や、転勤などが行われる可能性はあります。


会社からの収入のみに頼ったり、会社の看板で自信をブランディングしたりといった、会社ありきで自分の人生を設計してしまうことは、今後もっと厳しく、リスクのあるものになっていきそうですね。

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